2009年 12月 04日
新しく、美しい文脈を見つけ出す |
2週間程前になりますが、久しぶりに名工大の「現代建築家・現代デザイナー連続レクチャー」に行ってきました。今回のゲストはスキーマ建築計画 の長坂常さん。東京芸大卒で、最近何かと目にするの芸大卒建築家のラインです。
スキーマ建築計画
http://www.sschemata.com/
家具なども精力的にこなし、「PACO」では家具・建築・アートを具現化するプロジェクトを展開し、「HAPPA HOTEL」では、新しいホスピタリティを持ったホテルを提案、また、減築リノベーション「Sayama flat」では文学的ですらあるコンセプトを披露してくれました。
家具
http://www.sschemata.com/works/others/flat_tab/
「PACO」
http://paco.bz/index.html
「HAPPA HOTEL」
http://www.happa.tv/happahotel/
「Sayama flat」
http://www.sschemata.com/works/architecture/sayama_flat/
彼は、「ある傾向/作風を持ったデザイン」ではなく「既にある状況を一旦肯定して、増幅させる箇所、差し引く箇所を判断する、dub mix的コンセプト」重視のデザインを展開していると言います。
それは上記の作品を見ても簡単に理解でき、彼にとって「建築」は手段であり、常にあるのはその場・街に存在する者の視点。だから、彼は結果的であれ日常に何かを仕掛けて行きます。
■減築コンセプト
「減築」はここ数年、注目されてきた建築手法です。多くは子供達が巣立って、老後の生活に入った今となっては、持て余す部屋を減らす事で以下のような効果を狙ったものです。
・掃除などの家事を減らし、
水平垂直移動の距離を減らすことで、
体への負担を少なくできる。
・光や風などを改善し住みやすくできる。
・耐震性の向上が計りやすい。
・冷暖房や照明などの電気代のコスト削減。
・買い替えなどにくらべ低コストですみ
愛着ある友人や土地から離れずにすむ。
また、住宅ストックが世帯数を遥かに超え、人口も減り、資金力もなく、老朽化してゆくことが予想される建築物は「負の遺産」になりかねず、それをいかに今のライフスタイルに合わせて『良質な住宅ストック』へ変えて行くかは切実な問題でもあります。
それは「Sayama flat」も例外ではなく、改装のための予算は超低予算のため、図面も引かずに現場で考えながら自ら解体して行く中で、今まで違和感を感じながら肥大してきた需要と供給などのミスマッチを削ぎ落とし、今必要となるであろう新たな骨格をさらけ出して行く『引き算のデザイン』を試みています。
それは視点を変えて美を見出す行為、作業でしたが、今回彼はじつに見事にそのコンセプトを説明してくれました。
夏目漱石の小説「我が輩は猫である」の冒頭のページをスクリーンに映し出しますが、所々、文の一部が白抜きされています。本来この小説の持っている世界から、文の一部を抜き取る=引く事で、その残った文脈から新しい別の世界を見つけるようなもの、というのです。
この説明はじつに美しく、これだけでも足を運んだ甲斐がありました。
■ 引き算のデザイン
また、『引き算のデザイン』はじつに日本的でもあると思います。
”うつし” ”つくし” ”みたて”
”くらべ” ”ならび” ”くずし”
これら日本的デザイン手法は本物=真に対する仮の美を示し、その仮がやがて日本的美意識へと昇華して行くのですが、『引き算のデザイン』もそれに似た構造を持っています。
現状に対し『引き算』という手法を用いる事で、新たな美を見出し、昇華させる様は上記の日本的デザイン手法をも使いつつじつに面白く、日本的と思うのです。
■ レクチャーの後
その後、場所を変えて親睦会にも顔を出し、面白いお話をたくさんお聞きし、精力的に仕掛けて行く姿勢を見習わなくては!と思ったりしながら、他方でこの名工大の意外な面を見て羨ましく思っていました。
それは生徒が自由に使えるキッチンがホールに面してある事。この親睦会に出されてたスパゲッティーも、学生達がここで作ったもので、なんでも学内の改修の時に先生がアイディアを出したのだそうです。結果、研究室は『不夜城』と化しているそうで、熱い姿勢を感じました。
私も学生時代に泊まった事はありますが、遅い時間では学食もなく、食べに行くかカップラーメンをすするしかなく、何か途切れた感じがしたものでした。しかも、今の母校は「宿泊禁止」と聞いたことがあるので、尚更可哀想な感じです。
「『不夜城』でなければ、建築はできないでしょう!」
この連続レクチャーといい、先生方の『蒼い炎』を垣間見た感じがした一瞬でした。
スキーマ建築計画
http://www.sschemata.com/
家具なども精力的にこなし、「PACO」では家具・建築・アートを具現化するプロジェクトを展開し、「HAPPA HOTEL」では、新しいホスピタリティを持ったホテルを提案、また、減築リノベーション「Sayama flat」では文学的ですらあるコンセプトを披露してくれました。
家具
http://www.sschemata.com/works/others/flat_tab/
「PACO」
http://paco.bz/index.html
「HAPPA HOTEL」
http://www.happa.tv/happahotel/
「Sayama flat」
http://www.sschemata.com/works/architecture/sayama_flat/
彼は、「ある傾向/作風を持ったデザイン」ではなく「既にある状況を一旦肯定して、増幅させる箇所、差し引く箇所を判断する、dub mix的コンセプト」重視のデザインを展開していると言います。
それは上記の作品を見ても簡単に理解でき、彼にとって「建築」は手段であり、常にあるのはその場・街に存在する者の視点。だから、彼は結果的であれ日常に何かを仕掛けて行きます。
■減築コンセプト
「減築」はここ数年、注目されてきた建築手法です。多くは子供達が巣立って、老後の生活に入った今となっては、持て余す部屋を減らす事で以下のような効果を狙ったものです。
・掃除などの家事を減らし、
水平垂直移動の距離を減らすことで、
体への負担を少なくできる。
・光や風などを改善し住みやすくできる。
・耐震性の向上が計りやすい。
・冷暖房や照明などの電気代のコスト削減。
・買い替えなどにくらべ低コストですみ
愛着ある友人や土地から離れずにすむ。
また、住宅ストックが世帯数を遥かに超え、人口も減り、資金力もなく、老朽化してゆくことが予想される建築物は「負の遺産」になりかねず、それをいかに今のライフスタイルに合わせて『良質な住宅ストック』へ変えて行くかは切実な問題でもあります。
それは「Sayama flat」も例外ではなく、改装のための予算は超低予算のため、図面も引かずに現場で考えながら自ら解体して行く中で、今まで違和感を感じながら肥大してきた需要と供給などのミスマッチを削ぎ落とし、今必要となるであろう新たな骨格をさらけ出して行く『引き算のデザイン』を試みています。
それは視点を変えて美を見出す行為、作業でしたが、今回彼はじつに見事にそのコンセプトを説明してくれました。
夏目漱石の小説「我が輩は猫である」の冒頭のページをスクリーンに映し出しますが、所々、文の一部が白抜きされています。本来この小説の持っている世界から、文の一部を抜き取る=引く事で、その残った文脈から新しい別の世界を見つけるようなもの、というのです。
この説明はじつに美しく、これだけでも足を運んだ甲斐がありました。
■ 引き算のデザイン
また、『引き算のデザイン』はじつに日本的でもあると思います。
”うつし” ”つくし” ”みたて”
”くらべ” ”ならび” ”くずし”
これら日本的デザイン手法は本物=真に対する仮の美を示し、その仮がやがて日本的美意識へと昇華して行くのですが、『引き算のデザイン』もそれに似た構造を持っています。
現状に対し『引き算』という手法を用いる事で、新たな美を見出し、昇華させる様は上記の日本的デザイン手法をも使いつつじつに面白く、日本的と思うのです。
■ レクチャーの後
その後、場所を変えて親睦会にも顔を出し、面白いお話をたくさんお聞きし、精力的に仕掛けて行く姿勢を見習わなくては!と思ったりしながら、他方でこの名工大の意外な面を見て羨ましく思っていました。
それは生徒が自由に使えるキッチンがホールに面してある事。この親睦会に出されてたスパゲッティーも、学生達がここで作ったもので、なんでも学内の改修の時に先生がアイディアを出したのだそうです。結果、研究室は『不夜城』と化しているそうで、熱い姿勢を感じました。
私も学生時代に泊まった事はありますが、遅い時間では学食もなく、食べに行くかカップラーメンをすするしかなく、何か途切れた感じがしたものでした。しかも、今の母校は「宿泊禁止」と聞いたことがあるので、尚更可哀想な感じです。
「『不夜城』でなければ、建築はできないでしょう!」
この連続レクチャーといい、先生方の『蒼い炎』を垣間見た感じがした一瞬でした。
by DEPTH-TRUCT
| 2009-12-04 01:05
| 建築雑記