2008年 06月 19日
「岩手・宮城内陸地震」 |
土曜日の朝、いつもよりも遅い朝食をとっていると、NHKのアナウンサーが「緊急地震速報」を冷静に伝えていました。
2008年(平成20年)6月14日( 土)午前8時43分
「岩手・宮城内陸地震」発生
四川大地震も未だ報道が続く中でのM7.2の大地震は、山間部で多くの土砂崩れを起こし、中でも荒砥沢ダム上流での大規模な崩落は、目を疑うばかりの光景が広がり、あらためて地震の恐さを思い知らされました。
■建物への影響
基本的に地震の揺れには多くの周期が混在していますが、今回の揺れの特性は一般的に建物全体の80%以上を占めるとされる木造家屋や中低層鉄筋コンクリート造の建物に最も影響があるとされる1〜2秒の揺れ=”キラーパス”と呼ばれる周期よりも短かったため、思った程の倒壊などが免れたと考えられます。以下に、その検証があります。
「長周期地震動と短周期地震動の違いを
簡単な模型を使ってわかりやすく示したデモンストレーション」
http://www.kz.tsukuba.ac.jp/~sakai/dsn.htm
その他にも、
・この地域では、屋根に雪が積もりにくくするために軽いトタンを用いている家屋が多いため、瓦などの重い屋根による家屋の押し潰しが少なかった。
・厳しい寒さを防ぐために、窓や扉など開口部が小さく、相対的に壁の量が耐震的に有効に働いた。
など、東北地方独特の建物の構造が影響したとされますが、今回はたまたま建物への影響の少ない揺れであったと言うべきかと思われます。
■もし…
今回の「岩手・宮城内陸地震」は、国内最高の4022ガル(地震動の大きさを加速度で表したもの)で、阪神淡路大震災の818ガルの約5倍。あの時、国際的にも耐震性のあるはずの日本の高速道路をなぎ倒したのは この激しい加速度と言われ(未だ原因が特定されていないと言う説も…)、その後の補強基準も阪神淡路大震災に習っているので、もし、都会で起こっていたらその影響は大きかったと思われます。
また、先の”周期”や”ガル”、”震度”も その地域の地質や岩盤の形状など複数の要因で変わりやすく、同じマグニチュードでも、建物に与える影響は一様ではありません。
名古屋などの平野では、その堆積層などの地質から見ると「やや長周期: 2〜5秒」「長周期: 5秒以上」の発生が危惧されるので、長周波の固体振動を持つ高層ビルや巨大建造物などへの影響は大きく、しかも、堆積層そのものの液状化などにより、基礎や杭などに多大な影響が考えられています。
「液状化とは」
http://www.cive.gifu-u.ac.jp/lab/ed2/kensaku/liquid.html
これは、地震そのものの被害もさる事ながら、”高層”であったり”巨大”と言った建物そのもののによる、その後の復旧が進みにくいと言う人災にも似たことが大きな問題となります。その意味で、特にマンションなどの「私有財産」が”負の遺産”となりやすい側面を持っていることも知っておくべきでしょう。
住宅に限っても、昨今の住宅は費用が掛かるように造らなければならないので、復興に掛かる費用や時間は甚大で遅々として進まないのは、阪神淡路や新潟県中越地震を見てもおわかりと思います。
極論を言えば、住宅など壊れない程度に、もっと簡単に造れるようにして、一刻も早い復旧を促し、そこに暮らす人々の不安を早く取り除き、安心した元の暮らしに戻せるようにするために、建築基準法を抜本的に改める必要があると思います。
また、それは経済のみに由る改革ではなく、国策として「如何に被災者に安心を与えるのか」そのための「経済的仕組み」を鑑みる必要がありそうです。
********
経済至上主義から見れば、”過剰な都市化”はその副産物であり、避けて通れないのかもしれませんが、災害などのある環境の中で安心して暮らして行く仕組みを考えると、必ずしも必要ではないと思います。
次の世代に受け継がせるための暮らしや街づくり、都市環境などはどうあるべきか、毎回、地震の度に考える所が多くなります。
今回の犠牲者の悼み、また、行方不明者の方々の一刻も早い捜索、負傷者の方々の回復を願っております。
2008年(平成20年)6月14日( 土)午前8時43分
「岩手・宮城内陸地震」発生
四川大地震も未だ報道が続く中でのM7.2の大地震は、山間部で多くの土砂崩れを起こし、中でも荒砥沢ダム上流での大規模な崩落は、目を疑うばかりの光景が広がり、あらためて地震の恐さを思い知らされました。
■建物への影響
基本的に地震の揺れには多くの周期が混在していますが、今回の揺れの特性は一般的に建物全体の80%以上を占めるとされる木造家屋や中低層鉄筋コンクリート造の建物に最も影響があるとされる1〜2秒の揺れ=”キラーパス”と呼ばれる周期よりも短かったため、思った程の倒壊などが免れたと考えられます。以下に、その検証があります。
「長周期地震動と短周期地震動の違いを
簡単な模型を使ってわかりやすく示したデモンストレーション」
http://www.kz.tsukuba.ac.jp/~sakai/dsn.htm
その他にも、
・この地域では、屋根に雪が積もりにくくするために軽いトタンを用いている家屋が多いため、瓦などの重い屋根による家屋の押し潰しが少なかった。
・厳しい寒さを防ぐために、窓や扉など開口部が小さく、相対的に壁の量が耐震的に有効に働いた。
など、東北地方独特の建物の構造が影響したとされますが、今回はたまたま建物への影響の少ない揺れであったと言うべきかと思われます。
■もし…
今回の「岩手・宮城内陸地震」は、国内最高の4022ガル(地震動の大きさを加速度で表したもの)で、阪神淡路大震災の818ガルの約5倍。あの時、国際的にも耐震性のあるはずの日本の高速道路をなぎ倒したのは この激しい加速度と言われ(未だ原因が特定されていないと言う説も…)、その後の補強基準も阪神淡路大震災に習っているので、もし、都会で起こっていたらその影響は大きかったと思われます。
また、先の”周期”や”ガル”、”震度”も その地域の地質や岩盤の形状など複数の要因で変わりやすく、同じマグニチュードでも、建物に与える影響は一様ではありません。
名古屋などの平野では、その堆積層などの地質から見ると「やや長周期: 2〜5秒」「長周期: 5秒以上」の発生が危惧されるので、長周波の固体振動を持つ高層ビルや巨大建造物などへの影響は大きく、しかも、堆積層そのものの液状化などにより、基礎や杭などに多大な影響が考えられています。
「液状化とは」
http://www.cive.gifu-u.ac.jp/lab/ed2/kensaku/liquid.html
これは、地震そのものの被害もさる事ながら、”高層”であったり”巨大”と言った建物そのもののによる、その後の復旧が進みにくいと言う人災にも似たことが大きな問題となります。その意味で、特にマンションなどの「私有財産」が”負の遺産”となりやすい側面を持っていることも知っておくべきでしょう。
住宅に限っても、昨今の住宅は費用が掛かるように造らなければならないので、復興に掛かる費用や時間は甚大で遅々として進まないのは、阪神淡路や新潟県中越地震を見てもおわかりと思います。
極論を言えば、住宅など壊れない程度に、もっと簡単に造れるようにして、一刻も早い復旧を促し、そこに暮らす人々の不安を早く取り除き、安心した元の暮らしに戻せるようにするために、建築基準法を抜本的に改める必要があると思います。
また、それは経済のみに由る改革ではなく、国策として「如何に被災者に安心を与えるのか」そのための「経済的仕組み」を鑑みる必要がありそうです。
********
経済至上主義から見れば、”過剰な都市化”はその副産物であり、避けて通れないのかもしれませんが、災害などのある環境の中で安心して暮らして行く仕組みを考えると、必ずしも必要ではないと思います。
次の世代に受け継がせるための暮らしや街づくり、都市環境などはどうあるべきか、毎回、地震の度に考える所が多くなります。
今回の犠牲者の悼み、また、行方不明者の方々の一刻も早い捜索、負傷者の方々の回復を願っております。
by DEPTH-TRUCT
| 2008-06-19 23:13
| 建築雑記